
介護費用はどれぐらいかかる?
介護保険
多かれ少なかれ老後資金をどうするかは誰しもが考える問題でしょう。その際に、生活費とは別に介護費用がいくらかかるかを想定していますか?
早い段階で介護が必要になる可能性がある一方で、健康なまま寿命を迎える方もいるので、費用どころか自分の介護が必要かどうかも具体的に考えるのは難しいですよね。そこで、介護費用の実際についてご紹介します。
介護費用の平均
(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によると、住宅を介護しやすく改造したり介護用のベッドを購入したりといった一時的な費用が平均740,000円、介護の月々の費用に平均83,000円が必要という結果になっています。介護期間が平均して5年1ヵ月なので、平均すると総額5,800,000円以上という計算になります。
<図1>介護に関する期間・費用

この金額は、介護保険サービスを利用したうえでの自己負担額の平均です。介護が必要な状況は人によって違い、あくまで計算された平均値に過ぎませんが、ひとたび介護が必要になると、公的な介護保険制度があってもこれだけのお金がかかってくる場合があることは知っておきましょう。
介護費用の負担を軽くするための介護保険制度
上記の介護費用は公的な介護保険サービスを利用したうえでの平均額です。「介護が必要になってきたのかも…」と感じたら、要介護認定の申請手続きをしておきましょう。
まずは、お住まいの市区町村の窓口で申請し、調査を受けて、介護が必要かどうか・どの程度の介護が必要か(要介護度・要支援度)を決定してもらいます。要介護度が決定したら介護状態に応じたサービスを受けられ、利用上限額までサービス利用料の自己負担は基本的に1割です。
状態 | 区分 | 在宅サービス 1ヵ月限度額 |
自己負担額 (1割) |
---|---|---|---|
心身の状態が改善する可能性の高い方で 日常生活の一部に支援が必要な状態。 |
要支援1 | 50,320円 | 5,032円 |
要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | |
入浴、排せつ、食事などの日常生活動作に ついて常に介護が必要な状態。 1から5に数字が大きくなるほど介護の 必要性が高く、要介護5は生活全般に ついて全面的介助が必要。 |
要介護1 | 167,650円 | 16,765円 |
要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | |
要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | |
要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | |
要介護5 | 362,170円 | 36,217円 |
会社員・公務員だった方の公的年金の受給額は平均約173万円とされていて、平均的な年金受給額の方なら自己負担1割となります。一定以上の収入がある方は2割または3割になることがあります。
なお、利用者の負担が重くなりすぎないよう所得に応じた負担軽減措置や、自己負担の上限額を定める「高額介護サービス費」もあります。
介護施設に入る?入らない?
介護が必要になると、「施設に入る?入らない?」をまず考える方もいらっしゃるでしょう。できれば住み慣れた自宅を離れたくない、でも施設に入ったほうが安心して過ごせるのではないかと気になりますよね。
(1)在宅サービスを利用した場合
在宅介護で自己負担1割なら、1ヵ月の自己負担額の上限は要支援1なら5,032円、要介護5では36,217円です。上限額を超えるサービスを受けると、全額自己負担となります。そして要介護度が上がるにつれて、ひとりで生活することが難しくなり費用も上がります。また、介護用紙おむつなど自宅で使用する介護用品の購入や、交通手段としてタクシーの利用が増えるなど、介護保険外にも把握しづらい出費があります。家族が介護に通ってくれるなら交通費や謝礼を考える場合もありますね。介護用品については市区町村での補助もありますので、ぜひ介護保険の手続きの際に確認しておきましょう。
(2)施設サービスを利用した場合
介護施設といっても、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、介護付有料老人ホームなどいろいろです。施設サービスの料金は、要介護度や施設の種類、職員の人数、個室か相部屋かなどによって変わります。しかも、施設サービスは、それまでの住まいに替わって施設で生活をする以上、原則として自己負担になる居住費・食費・日常生活費が支払いに含まれます。
<表2>施設サービスの1ヵ月の自己負担の目安
要介護5で介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)のユニット型個室を利用した場合
施設サービス費の1割 | 約27,500円 |
---|---|
居住費 | 約60,000円(2,006円/日 ) |
食費 | 約43,300円(1,445円/日 ) |
日常生活費 | 約10,000円(施設により設定される) |
合計 | 約140,800円 |
出典:厚生労働省「サービスにかかる利用料」を参考に作成
「月々の介護費用が平均約83,000円とすると、在宅介護なら平均より低く、施設介護はもっとかかる」と考えてしまいそうですが、在宅介護には介護保険サービス利用の自己負担分以外に見えづらい費用があります。加えて、在宅介護では介護のプロではない家族にとって体力・気力の面で大きな負担になります。費用面だけで比較して在宅介護に絞るのではなく、施設介護も視野に入れて資金の準備をすることがおすすめです。
民間の介護保険は必要?
年金だけで介護費用をカバーできるか心配なら、介護がはじまった早い段階での一時金や要介護度が進んだら介護年金を受け取れる、任意の民間の介護保険に加入しておくことも検討しましょう。公的な介護保険制度の介護保険料は要介護認定になっても払込免除はありませんが、任意で加入する民間の介護保険なら、保険会社指定の条件で保険料免除となる場合があります。老後の健康な間の生活を圧迫しないよう、無理のない保険料としておくと安心ですね。